なぜ、アレルギー表示に関するアンケートを行っているのか? ~甲殻類・軟体動物のアレルギー編~

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以下、東京海洋大学 小林先生が執筆されたものです。

 

<エビ、カニのアレルギーについて>

エビにアレルギーがある患者は、カニを摂取できる人もいれば、できない人もいます。

エビのみにアレルギーがある患者は、エビに含まれる「筋形質カルシウム結合タンパク質」と呼ばれるタンパク質に対してアレルギー反応を起こします。

このタンパク質に対してアレルギーのある患者は、カニの筋形質カルシウム結合タンパク質に対してはアレルギーを起こしません。

そのため筋形質カルシウム結合タンパク質は、エビアレルギーに特有のアレルギー原因物質です。

 

一方で、エビだけではなくカニにもアレルギーがある患者は筋肉に含まれている「トロポミオシン」と呼ばれるタンパク質を原因物質としています。

トロポミオシンをアレルギーの原因とする患者は、様々な生物のトロポミオシンに反応します。

例えば、このような患者はダニやゴキブリのトロポミオシンにも反応するので、喘息やアトピー性皮膚炎を併発している場合があります。

 

図1

 

多くのエビ・カニアレルギーの患者さんは、エビやカニのみならずその他の甲殻類や軟体動物の「トロポミオシン」にもアレルギー反応を示すことが分かっています。

一方、アレルギー表示制度の対象は図1のように甲殻類の中でも十脚目とよばれる生物に限られます。

 

図2はトロポミオシンを原因物質とする患者の血清が様々な十脚目にどの程度反応するかを調べた結果です。

強弱はあるものの全ての十脚目に対して患者血清が反応することがわかります。

 

図2

 

では、カメノテ、フジツボ、オキアミ、シャコなどのようなエビ・カニ以外の甲殻類はアレルギーを起こさないのでしょうか?

図3はトロポミオシンを原因物質とする患者の血清がエビ・カニ以外の甲殻類に反応するかを調べた結果です。

ナンキョクオキアミはブラックタイガー(ウシエビ)に匹敵する反応性を示します。

ミネフジツボやカメノテも比較的強く反応します。

一方、シャコの反応性は低いです。

このような食品は食べる機会は少ないですが、アレルギー表示制度の対象ではないので予期せぬところで商品などに入っていて気づかず口にしてしまう可能性もあります。

 

図3

 

 

<イカ、タコのアレルギーについて>

エビやカニを含む商品は絶対にパッケージに記載をしなければなりませんが、イカは任意表示です。

一方、タコは表示の対象ではありません

 

図4はトロポミオシンをアレルギー原因物質とする患者の血清がイカやタコに反応するかを調べた結果です。

イカ類はエビ類と比較すると総じて反応性が低いことがわかります。

臨床的にも実際にエビはアレルギーを起こすがイカは食べられるという患者が結構いるので、反応性の強弱の結果かもしれません。

注意しなければならないのが、タコ類はイカ類と同等の反応性を示すことです。

イカでアレルギーを起こす人の場合は、タコもだめな可能性が考えられます。

 

図4

 

<貝類のアレルギーについて>

貝類についてはアワビが任意表示なのを除き、アレルギー表示制度の対象外となっています。

図5はトロポミオシンを原因物質とする患者の血清が貝類にどの程度反応するかを調べた結果です。

アメリカンロブスターと比較すると、すべての貝類は反応性が低いことがわかります。

実際に臨床的にエビ・カニでアレルギーを起こす患者でも貝類を摂取できる人はよくいます。

これも反応性の強弱の結果と思われます。

ただ、反応性は低いものの全ての貝類が反応するので注意が必要です。

 

図5

 

トロポミオシンを原因物質とする患者の場合、エビ、カニに限らず、甲殻類ではカメノテ、フジツボ、オキアミ、軟体動物ではイカ、タコ、貝類に対して少なからず反応する可能性があります。

現状のアレルギー表示制度ではこれらの多くが表示の対象外なので、予期せぬところで知らず知らずのうちに摂取してしまう可能性も考えられます。

本当に表示制度は現状のままでいいのかを再検討する必要があるかもしれません。

 

引用文献(元図を基に改変)

1. Motoyama et al. J Agric Food Chem 55, 985-991 (2007)

2. Motoyama et al. Mar Biotechnol (NY) 10, 709-718 (2008)

3. Suma et al. Comp Biochem Physiol B Biochem Mol Biol 147, 230-236 (2007)

4. Motoyama et al. Food Chem Toxicol 44, 1997-2002 (2006)

5. Motoyama et al. Food Chem 114, 634-641 (2009)

 

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